夏の宵闇を彩る、美しくささやかな火花。

 夏の風物詩の一つ、宵闇にはぜる線香花火。その刹那にきらめく美しさに目を細めた記憶は、誰しも一度はあるだろう。「線香花火を取り扱うようになったのは13年前。今、国産の線香花火の製造所は全国に3社しかないんです」。その内の1社がみやま市にある創業85年の筒井玩具花火製造所。13年前、八女にあった国内唯一の線香花火製造所が廃業する際、廃業と同時にその製造技術を受け継いだのが、三代目の筒井良太さんだった。「線香花火の主な原料は松煙(しょうえん)。切り倒して30年程経った松の切り株をいぶして作る火薬です。これがとても貴重なんですよ」。日本では宮崎県で唯一製造されており、製造が終了してしまうと、それに伴って国産の線香花火もなくなってしまうのだという。「松煙の油分が弾け飛んで自然な美しい火花になるんです。質の良い松煙だからこそできる火花の美しさを守っていきたい。もっと多くの人に興味を持ってもらいたくて、昔ながらのもの以外にも八女の和紙を使った新しいデザインを考えました」。今では貴重となってしまった国産の線香花火。筒井さんの手によって守られる美しい火花は、この夏もいっそう輝くだろう。


線香花火の構造は、包み紙と火薬のみというシンプルなもの。紙に火薬を乗せ、紙をより上げていくのは簡単そうに見えるがなかなか難しい。
昔ながらのデザインの線香花火はとてもカラフル。「より手」と呼ばれる職人が、手作業で一つひとつよっていく。
八女の和紙に草木染めをほどこした線香花火は、今までにない新しい試み。手触りや風合いがやさしい。
昔ながらのスボ手と呼ばれる藁(わら)を使った線香花火も製造している。

Profile

筒井良太(つついりょうた)
筒井時正玩具花火製造所三代目。取り扱っている線香花火は、火薬をこよりで包んだ「長手」とワラスボの先に火薬を付けた「スボ手」の2種類。
筒井時正玩具花火製造所 住/みやま市高田町竹飯1917 問/0944-67-2335

写真=石川博己 文=原口昌子