過去から未来へ、つながり残っていく和紙とその想い。

 普段わたしたちが何気なく使っている紙。その用途は様々だ。その中でも八女の手漉き和紙は、文化財の修復、掛け軸の裏打ちなど特に繊細な作業に使用される。「きれいな水と豊かな資源の中で和紙作りは発展していきました。その最大の特徴は薄さとやわらかさです」。もともとは古紙回収の仕事をしていた溝田さん。16年前に奥さんの実家の家業である、手漉き和紙の跡継ぎがいなかったことからこの道に入った。原料処理に徹底的にこだわり、自然素材だけで作られた溝田さんの和紙は劣化や変色がない。「日本の美術品は江戸後期から世界中に分布しています。その修復は日本の和紙でないとできません。和紙は世界に通用するんです」。修復といえば溝田和紙と、世界から注文がくるようになりたいという想いがあると語る。また久留米大学の比較文化研究会に所属し、平安時代の紙を復興する研究や、地域の資源を活かした“筑後優品”という商品の開発にも関わっている。「和紙作りをしていて嬉しいのは、メディアに出ること。それによって普段はあまり表に出ない八女手漉き和紙の良さが知られていくことです」。その言葉には、和紙への愛情、そして職人としての誇りがつまっていた。


和紙の薄さと柔らかさを出すための原料処理は、自分の感覚で身に付けたという。繊維のゴミを見えない部分まで取り除き、弱アルカリ性の灰汁でたく。
細かくした楮の繊維と、トロロアオイという粘性のある「ねり」と呼ばれるものを漉船(すきぶね)と呼ばれる水槽の中で混ぜ合わせる。
漉く紙のサイズによって道具も使い分けられている。
この場所から生まれた和紙が、何百年先も残っていく。気温の低い冬場が和紙を漉くのに最も適している。
漉かれた和紙は一枚一枚丁寧に延ばされ乾燥されていく。乾燥も重要な工程だ。
所狭しと積まれている和紙は種類によって厚さが違い、それぞれ役目を待つ。

Profile

溝田俊和(みぞたとしかず)
16年前から和紙作りを始める。八女手漉き和紙の伝統を残すため、久留米大学比較文化研究会に所属。現在はクララという防虫効果を持つ植物を用いた和紙の研究を進めている。
溝田和紙工房 問/0943-22-6087 住/八女市柳瀬708-2

写真=石川博己 文=原口昌子