町が歩んできた歴史を知ることから、私たちの町づくりが始まる。

 「今は大好きな大牟田ですが、思春期の時は“早く出たい”とばかり思っていました」。そう語るのは、石炭・石炭灰を原料とした画材を考案し、それらを用いてワークショップを行なっている國盛麻衣佳さん。故郷を好きになれなかった彼女に変化が訪れたのは、祖父母、曾祖父母がかつて三池炭鉱の事務所で働いていたと知った時だった。「炭鉱の歴史があるから今の私たちの生活が成り立っていると知って、自分のルーツである大牟田と向き合おうと思ったんです」。一度の事故で多くの命が失われる炭鉱。当時を知る人は多くを語らず、コンプレックスを抱えたまま年を重ねている。「忘れたいという人も多くて、最初は親類たちに大反対されました。だけど町全体が抱えるコンプレックスなら、この町に住むみんなで解消しないと意味がないと思って」。ワークショップに参加する子供たちは無邪気に、炭鉱というテーマを楽しむ。「その姿を見て、辛い思い出だった炭鉱に子供たちの笑顔が加わること。そして炭鉱を知らない私たちが、炭鉱というテーマの中で自分なりのリアリティを積むことが大切」。すぐに形にならなくても、自分の町の歴史を知ることに意味がある。「そこから町づくりが始まるんです」と、國盛さんは語ってくれた。


石炭・石炭灰を原料とした画材『COAL PAINT(コールペイント)』。工業試験センターで石炭を粉砕して作っている絵の具と日本理化学工業に依頼して作ったチョーク。
飯塚市嘉穂劇場の先代社長、伊東英子夫人肖像を筑豊地区の石炭等を使用して制作。
2008年秋田県大館市で行なわれた『ゼロダテアートプロジェクト』。石炭で作ったチョークを使い、親子で似顔絵を描くワークショップ。
2010.9.18. 岩見沢百餅まつりで行われた『COAL PAINT Workshop – 石炭チョークでだいすきな人の似顔絵を描いてプレゼントしよう!』。

Profile

國盛麻衣佳(くにもりまいか)
1986年福岡県大牟田市出身。2007年に石炭や石炭灰から絵具「COAL PAINT」を作り、地元や各炭鉱町でワークショップや作品制作を始める。現在は九州大学大学院芸術工学府博士課程 環境・遺産デザイン学科 藤原惠洋研究室 在籍中。
問/080-4280-3123 kunimorimaika@yahoo.co.jp

写真=石川博己 文=松岡紗央