さまざまな出会いを重ね、表情を変えていく陶人形。

 手のひらに乗る小さなものから猫ほどの大きさの人や動物。にしださんの作る陶人形は、そのユーモラスな表情で見る人の心を和ませる。「大学で陶芸を学んでいた頃、土の残りで作った人形を、器を焼く窯の隙間で焼いていました。器よりも人形が自分を表現出来るように感じていて、卒業後、 グループ展の誘いを受けた時に思い浮かんだ題材は人形でした」。以来、熊本を拠点に陶人形の制作と展示を重ねている。制作は心の動きを浮き上がらせるように、淀みなく進む。「形が見え始めると迷いがなくなり、土に潜んでいるものを取り出すような感覚で作っています」。そのいきいきとした感覚を活かすために、ヘラ跡など表面の荒さを残す。瞳は入れない。「瞳を入れると人形の表情が決まってしまうし、見る人の自由に感じる心の邪魔をしたくないんです」。 見る人の気持ちを投影し、一人ひとりに異なった印象を与える陶人形。にしださんは発表の場を設け、感想を聞くことを大切にしている。「人との出会いで新しい世界が広がり、また作りたいものが増えることの繰り返し。それがなければ創作を続けることは出来なかったかもしれません」。 これからもさまざまな出会いを重ね、にしださんの人形は表情を豊かにしていくことだろう。


主な個展会場となっている「古民家ギャラリー百花堂」の中庭に溶け込むにしださんの人形。風雨を受けて風合いも変化していく。
廃土をひねり、へらで削り、土の中に潜んでいるものを取り出すように手際よく作業が進む。
百花堂のオーナー木部さんは、にしださんのよき理解者。木部さんは人形と対話しながら設営をする。この空間でしか見られない人形の表情がある。
見る人に語りかけるような豊かな表情の人形。

Profile

にしだみき
有田窯業大学校を卒業後、2003年より陶人形作家として熊本県を中心に活動を開始。制作・展示を重ねている。 作品は百花堂に常設展示され、のびのびとしたその姿を楽しむことができる。
古民家ギャラリー百花堂 住/熊本県山鹿市山鹿1371
問/080-6426-4519 http://hitotukoubou.web.fc2.com/

写真=井上あづみ・安武洋平 文=梅野裕美