こんがり焼けたお菓子のように、顔がほころぶおいしい器。

 「作品制作は、パイやクッキーを作る工程によく似ているんです」。コンガリ焼けたパイや、ざっくりとしたクッキー。よく焼けたおいしい焦げ目のような色合いの、コンガリ舎・くぼともこさんの作る器にはお菓子が似合う。「アイデアは生活の中から浮かんできます。植物が好きなので、種や実の形から発想を膨らませることも多いですね」。木版画のようなあたたかいタッチで削りだされた、花やちょうちょや小鳥。作品の一つひとつがまるで物語のひとコマのよう。「陶器はいつも使うものだから、そこにあって楽しい気持ちになるものにしたいんです」。学生時代、好きな陶芸作家の多くが絵画を勉強していたことを知り、自らも美大に入学。すらすらと削り出される表情豊かな線は、クロッキーや油絵を学んだからこそ。「人それぞれに得意なことがあると思うんですけど、私が得意なのは“作ること”。そして、それを通して発信することです。表現方法は変わったとしても、この先も作ることを通して何かを届けていきたいです」。風が気持ち良いアトリエ。ほどよく手入れされた庭と、そこを自由に行き交う猫。手作りのお菓子。心地良く生きることの意味を知るくぼさんの作品は、私たちに生活そのものの喜びを与えてくれる。


模様はフリーハンドで。まわりを更に削ることで版画のような雰囲気になる。黄土の部分は黒く、黒い線は白く焼き上がる。

素焼きしたものに釉薬をかける。少しの接触で釉がはげてしまうので、窯に入れるときはとても緊張するそう。

糸島に工房を構えて6年。ほどよく手入れされた庭にはさまざまな植物が生育し、くぼさんにインスピレーションを与える。


Profile

くぼともこ
有田窯業大学を卒業後、武蔵野美術大学短期大学部へ進学しクロッキーや油絵を学ぶ。25歳のときに九州クラフト展にて新人賞を受賞、1998年よりコンガリ舎として活動を開始し、現在は糸島市にアトリエを構える。年に1度個展を行なっている。
問/092-327-1373 kongarisha@gmail.com http://kongari.oops.jp/

写真=石川博己 文=柳田奈穂