黒と白、その簡素な美しさの中にある“わびさび”。

 「装飾が主役になるものは作りたくないんです」。きっぱりとした口調とまっすぐな瞳。陶芸家・馬場勝文さんの僧侶にも似た雰囲気は作品にも通ずる。「これ以上ベストな形はない」と言い切る、簡素で無駄なく美しいシルエットの急須、しょうゆ差し。どっしりとした耐熱のミルクパン。色は黒と白が基本で、絵付けはしない。「中学生の時から古信楽が好きでした。ごつごつとした石のような、その土肌に魅かれたんです」。信楽焼は滋賀県信楽町を中心に作られ、日本人独特の美である“わびさび”を見出した伝統的な焼き物だ。「大学3年生のときに、“自分はサラリーマンには向いていない、陶芸を仕事にしたい”と考えて、信楽を含め国内の産地をすべてめぐり、最終的に信楽の窯業試験場へ行くことを決めました」。独立を見据え、小物ロクロ科研修過程を修了後は信楽の窯元で修行し、技術を磨いた。故郷である久留米市に工房を構えたのは2003年のこと。「原料にこだわり、手は加えすぎないように。結婚式の日も、お葬式の日にも、どんなコンディションでも使えるものでありたいんです」。シンプルだけれど冷たくない、主張は強くなくても“馬場さんの作品”だと分かる。質実剛健な作品が、頼もしく日常を支えてくれる。


成形はたたら、ロクロで。6分ほど乾いたところでハケ塗り、白化粧を施していく。

しょうゆがたれない、絶妙な形のしょうゆ差し。金属部分はスズを加工し制作。スズは酸化や腐食に強く、古くから飲食器として重宝されてきた。

ミルクパンや土鍋など、耐熱の土を使った作品も多い。陶器で料理すると味がまろやかになるという。取手部分は水に強い、船の甲板に使われるチークを自ら削っている。


Profile

馬場勝文(ばばかつふみ)
信楽窯業試験場小物ロクロ科研修過程を修了後、信楽丸十窯、信楽草土窯にて修行。2003年に故郷である久留米市にて独立。『馬場勝文陶工房』を構える。展示を重ね、現在では福岡をはじめ、東京や大阪など全国のセレクトショップで取り扱われている。個展・グループ展にも精力的に参加。
問/0942-45-5553 http://www1.bbiq.jp/b-b-b/

写真=石川博己 文=柳田奈穂