伝統に加えるひと工夫、世紀を超えて食卓を彩る器。

朝倉郡東峰村小石原。およそ400年も続く“民陶”小石原焼の窯場で、40年以上にわたり作陶を続けている太田哲三さん。「作ることが好きだから、アイデアが次から次へと浮かんでくるんです。制作について悩んだことはないですね」と、どこか照れくさそうに話す。窯場で育ち、幼い頃から父親や職人の仕事を見てきた哲三さんは伝統の本質を見失わない。「表面だけの造形に傾かず、“用途に忠実なものを作る”というのが小石原焼の伝統です。長くロクロに入り訓練を怠らず、使い易さを追求していく。そうするとおのずと美しいフォルム、バランスのとれた形になるんです」。作品に施された飛び鉋や櫛目、刷毛目、指描きといった伝統技法には、技術を受け継ぎながらも時代に感応する、哲三さんの柔軟な感性が垣間見える。皿に垂直に描かれた、大きくゆったりとした指描きの線。黄系の飴釉で焼成されたスープ皿と、控えめに施された飛び鉋。料理を引き立たせることを第一としながら、器そのものにも魅力がある。「変わらない仕事を続けながらも、使い手の意見を取り入れて更にその先を進んでいかないとね」。生活の中で愛され続ける器。伝統に加えた哲三さんのひと工夫が、400年前と変わらず小石原焼を食卓に運ばせるのだ。


湯のみ等をのぞき、足で回す「蹴りろくろ」で成形を行なう。15cm皿であれば1日に200枚ほど成形。体が形を覚えている。

通常は円状に施す櫛目を縦に行なうことで、すり鉢の目立てができる。食材が均一に混ざるように深さ、アールまで計算されており、注ぎ口を作ることで“器としてのすり鉢”に昇華させた。

息子の圭さんは18年目。ぐい呑みから始まり今では小物全般を任されている。


Profile

太田窯 太田哲三(おおたてつぞう)
民窯の一人者・太田熊雄、三男。窯業学校を卒業後、父の元で7年間の修行を経て昭和50年に独立。以来小石原にて伝統を守りながらも柔軟に職人の仕事をまっとうしている。小石原焼陶器協同組合・理事長。
住 /朝倉郡東峰村大字小石原941 問 /0946-74-2159

写真=石川博己 文=柳田奈穂