“japan”という名の器。自然のもたらす深い色艶としっとりとした手触り。

 お正月や結婚式、ハレの日の食卓に並ぶ漆器。八女市国武で蒔絵を制作する「銹工芸」では、その技術を生かし漆器の制作も行なっている。工房には朱と黒だけではない、オフホワイトの優しい色合いの漆器や乾湿と呼ばれるざらりとした手触りの漆器、上下にビビットな色がさされたお箸や子供用のスプーンが並ぶ。「伝統工芸はまず、興味を持ってもらうことが大切です。そのためにもお椀やお箸など生活の中で使いやすいものを作り、漆の魅力をより身近に感じてもらいたいと、制作を始めました」。漆はウルシノキの樹液を加工した天然樹脂塗料で、発祥地は日本であることから海外では“japan”と呼ばれている。「深い艶と色、しっとりとした手触りは自然から頂いたものです。自然豊かで四季のある日本だからこそ、漆という技術は生まれたんでしょうね」。この道を歩み始めて20年以上。弟子を取らない山下さんにとって、制作とは自分とひたすらに向き合うことでもある。「今していることは自分一人で終わるものです。だからこそ死ぬまでには何かを残したいし、次の世代にも漆を伝えていきたいですね」。長年続けてきてたからこそ見えるもの。職人が見るその境地は、漆器のその艶を通して私たちの目にも映しだされていく。


木地に漆を塗り、乾かし、水で研ぐ工程を木の質によって10回〜15回繰り返す。乾燥には1日を要するため、漆を塗る回数が多いほど制作にかかる時間も長くなる。

サイズや材質、塗り方もさまざまな箸。普段使いにも贈り物にも最適。しっとりと馴染む握り心地。

エフ・ディプロダクツオリジナルの漆器。魔除けの意味を持つ伝統的な蛇の目紋様をテーマに制作中。写真はサンプル品。


Profile

山下祐司(やましたゆうじ)
20歳で鹿児島の蒔絵職人の元に弟子入り。地元に戻り、八女仏壇や八女提灯の蒔絵制作を始め2004年からは器などの制作をはじめる。工房および八女伝統工芸館、イベントにて購入可能。
住/八女市国武508 問/0943-24-0287

写真=石川博己 文=柳田奈穂