映画絵看板師=豊福久義さん

「描きたい」という想いを、筆に込めて塗り重ねていく。

写真と見まがうほど、人物やタイトルが丹念に描かれた映画絵看板。昭和の時代は手描きの看板が街角に飾られ、それが当たり前の風景だった。「小さい頃から描くことが好きで、17歳の時に看板描き職人の見習いになりました。3年はずっと雑用ばかり。早く自分で看板を描きたくて、仕事が終わってから毎日デッサンをしていました」。豊福さんの絵に対する想いは深い。「看板師のほとんどは原画を投影して下絵を描いていましたが、私はフリーハンド。自分で描かないと上達しないですから」。看板はベニヤ板に水溶性の絵の具で描かれる。まず赤や黒で板の色を消し、その上から描くイメージに合わせて、白やオレンジ、緑などで単色の下地を5回ほど塗る。描き上がった絵は色味に下地の影響を受け、雰囲気のある仕上がりになる。「漆と同じようなものです。何度も重ねることで絵に深みが出る」。描くことがライフワークという豊福さん。現在は主にイベントや記念館などで展示する作品を制作し、69歳になった今でも看板を描き続けている。「この仕事しかできないし、ずっと描き続けていきたい。自分は映画看板師ですが、絵描きのつもりで絵と向き合っています」。そう語る豊福さんの目は、まっすぐと自分の作品を見つめていた。


映画絵看板師=豊福久義さん
イベントで展示するために描かれたマリリン・モンロー。下地の色や筆のタッチを残したものなど、それぞれ違った印象で描かれている。
映画絵看板師=豊福久義さん
豊福さんの作品は様々なところに展示されている。写真は久留米にある黒澤明監督をテーマにした居酒屋『隠し砦』。
映画絵看板師=豊福久義さん
『隠し砦』ののれんも豊福さんの手描きによるもの。
映画絵看板師=豊福久義さん
佐賀の映画館『CIEMA』では豊福さんの似顔絵教室が開催されている。教室では、デッサンや色付けなどの技法が学べる。

Profile

映画絵看板師=豊福久義さん

豊福久義(とよふくひさよし)
17歳の時に看板師に弟子入りし、以来映画絵看板を描き続ける。豊福さんの作品は久留米の居酒屋『隠し砦』や、朝倉郡の『山村文化交流の郷 いぶき館』などに展示されている。佐賀の映画館『CHIEMA』では、不定期に似顔絵教室を開催中。

写真=石川博己 文=原口昌子